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X線天文衛星「あすか」は、2000年7月15日に発生した激しい磁気嵐の影響で姿勢に大きな乱れを生じ、電力供給にも影響が出たため、その後観測を停止した状態が続いています。
衛星打ち上げから約7年半が経過し、当初はおよそ530kmあった「あすか」衛星の近地点高度は、2000年7月の時点ではおよそ440kmにまで下がっていました。ところが、7月14日に起きた巨大太陽フレアによって7月15日には非常に激しい磁気嵐が発生し、世界時間で22-23時頃(日本時間で16日7-8時頃)に「あすか」の軌道高度付近の大気密度が突如数倍に増加しました。その結果、空気抵抗による外乱が急増して姿勢が保持できなくなり、衛星は自動的に安全退避モードに移行しました。しかしながら想定以上に大きな空気抵抗が続いたために、安全退避モードでも衛星の姿勢を維持し続けることができず、姿勢が大きく乱れて太陽電池への日射量が減少し、衛星の持つ蓄電池の電力を使い切ってしまいました。
この対策として、衛星維持に必要な機器以外の機器(観測装置を含む)を止め、蓄電池を充電することを試みてきましたが、蓄電池が過放電によるダメージを受けていると考えられ、充電が技術的に困難な状況に陥っています。現在も引続き衛星の状態監視を続け、電力を確保する方法を模索中ですが、残念ながらまだ観測再開のメドは立っていません。
「あすか」は、1993年2月の打ち上げ以来、当初の運用予定期間である3-4年をはるかに超え7年半にわたって観測を続け、大きな成果をあげてきました。近地点高度の下がり具合から、2001年半ば頃には地球の大気圏に再突入して消滅することが予想されており、したがってあと1年程度観測を続けることが期待されていました。「あすか」衛星チームでは一日も早い復旧を目指して、引続き努力を続けていく所存です。