トップ > 日本のX線天文グループ > あすかの成果 > 第1章 > はじめに

はじめに

人間と同じように、星にも一生があります(図1)。何もないように見える宇宙空間にも、ごくわずかに物質が存在しています。星の一生は、これらの星間物質が自分たちの重力で引きあい、収縮を開始することによってはじまります。このようにして生まれた赤ん坊の星を「原始星」といいます。原始星は自分の重力で収縮を続け、それに伴って中心の温度と密度が高くなり、やがて水素の核融合がはじまります。水素の核融合によって安定に輝くようになると星も一人前です(主系列星)。その先の運命は、基本的には最初の質量で決まります。太陽程度の質量の星は、およそ100億年にわたって輝き続け、赤色巨星になった後、静かに最期の時を迎えます。中心には「白色矮星」と呼ばれる地球程度の大きさの、けれども非常に密度の高い星が残ります。これに対して太陽よりずっと質量の大きい星は、核融合の燃料をわずか百万年ほどで使い果たし、「超新星爆発」と呼ばれる大爆発を起こして華々しく一生を終えます。そして、中心には白色矮星よりもさらに密度が高い「中性子星」「ブラックホール」が残ります。星の死によってばらまかれた物質は再び星間物質となり、宇宙空間に戻っていきます。

[吸収]
図1:星の一生と物質の循環

以上のような一生を通して、星は元素合成という役割を担っています。最初、宇宙には水素とヘリウムしかありませんでした。炭素、窒素、酸素、硅素(シリコン)、鉄など、それより重い元素はすべて星の内部で作られたものなのです。これらの重い元素は、地球や人間を含むすべての生命を形作るのになくてはならない材料ですから、宇宙の「化学進化」を解明することで、地球や生命がどのようにして生まれてきたのかという根源的な問題に迫ることができるのです。

目次 上へ 前へ 次へ