穏やかに私たちを暖めてくれる太陽も、実は日々大規模な爆発を繰り返しています。このしくみは、日本の太陽観測衛星「ようこう」などによる太陽X線の観測によって明らかになってきました。太陽表面にある磁力線がつなぎ変わる時に膨大な量のエネルギーが解放され、大気は1千万度にまで加熱されるのです。太陽以外の星(恒星)は遠くにあるために点にしか見えませんが、こういった星でも話は同じです。X線で見てみると同じような爆発現象を起こしていることが明らかになってきました。
その中でも「あすか」が注目したのは、年齢が十万歳くらいのとても若い星、人間に例えると生まれて1週間の新生児に相当する「原始星」です。このような星ではまだ中心の温度が低いので、太陽のように核融合反応を起こしてエネルギーを作ることができません。そのかわりに、自分自身の重力で星が縮むことによって光っています。「あすか」は、このような原始星が頻繁に、太陽より何千倍も激しい爆発を繰り返していることを明らかにしました。
図1は、「あすか」で見た「みなみのかんむり座R星」付近の暗黒星雲の様子です。赤外線の観測で、この暗黒星雲の中心でまさに星が生まれつつあることがわかっています(左上の小さな図)。左側は波長の長いX線(軟X線)で撮った写真ですが、暗黒星雲の中心(図の中心の十字印付近)には何も見えません。けれども、右側の波長の短いX線(硬X線)で撮った写真では、みごとに原始星の集団からのX線をとらえています。星は塵やガスの奥深くで生まれるので、生まれたばかりの非常に若い星はこれらの塵やガスに隠されてしまいます。そのため、軟X線では何も見えず、濃い塵やガスを透かして天体を見ることができる硬X線を使ってはじめて、これらの非常に若い星がX線で輝いていることがわかったのです。X線のスペクトルを分析した結果、原始星のまわりに数千万度というひじょうに温度の高い、希薄なガスがあることが明らかになりました。核融合反応の始まるはるか以前の若い星が、核融合で安定に輝く太陽よりはるかに大きな爆発現象を繰り返しているとは、なんとも驚きではありませんか。
図1:「あすか」が見たみなみのかんむり座R星付近の暗黒星雲のX線写真(左が軟X線、右が硬X線)。右下の赤の矢印が距離1.5光年に対応します。白の等高線は分子雲の濃さを、右図の緑色の十字は原始星の位置を表しています。
別の原始星からは、1日周期の自転に伴ってX線で明るい部分が見え隠れするありさまや、およそ20時間ごとに爆発を繰り返す現象(図2)なども観測されました。後者の場合、星の周りに広がるガス円盤までのびる巨大磁場が、X線活動を引き起こしているのかもしれません。
図2: へびつかい座ρ星暗黒星雲の原始星YLW15で観測された準周期的フレア(爆発現象)。横軸が観測開始からの経過時間、縦軸がX線の明るさを表しています。およそ20時間ごとにX線が急に明るくなっていることがわかります。
いっぽう、太陽の2倍から10倍の重さの恒星は星の上で磁場を作ることができず、X線をほとんど出さないことが知られています。けれども、こういった重い星も若い時には爆発現象を見せることが「あすか」の観測でわかってきました。これらの原始星からのX線は最初に述べた原始星のものとよく似ていています。星は生まれた当初、重さの別なく同じように磁気エネルギーで輝いているのかもしれません。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |