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はじめに

夏の夜空を見上げると、はくちょう座からさそり座にかけて、うすくぼんやりと光る光の帯を見つけることができます。いにしえより「天の川」と呼ばれるこの天体の正体は、約2千億個もの星の集まり「銀河系」です(「私たちの銀河系」あるいは「天の川銀河」などとも呼ぶこともあります)。

私たちの銀河系は、アンドロメダ銀河などとよく似た渦巻銀河で、中心部分がふくらんだ円盤型をしています(図1)。円盤の直径は10万光年にも達します。私たちの太陽系は、銀河系の中心からはずいぶんはずれたところに位置しています。夜空に見える天の川は、地球の位置から私たちの銀河系を、円盤にそって横向きに見たものです。この円盤にそった面のことを「銀河面」と呼びます。

[銀河系断面]
図1:天の川銀河の断面の模式図

天の川銀河は私たちに最も近い銀河ですから(中にいるのですから当然ですね)、銀河のことを詳しく調べるには最も適した天体です。けれども、太陽の位置から天の川の方向(銀河面にそった方向)を望むとたくさんのガスや塵に邪魔されて、遠く(たとえば銀河系の中心)からやってくる可視光や波長の長いX線を見ることはできません。「あすか」は波長の短いX線(硬X線)の写真を撮ることができる初めての衛星です。波長の短いX線は銀河面にある厚いガスや塵を通り抜けてきますから、「あすか」の登場によって人類は銀河面からやってくるX線を詳しく調べることができるようになったということになります。

私たちの銀河系のすぐ近く、およそ16万光年と20万光年離れたところに、大マゼラン星雲、小マゼラン星雲という二つの小さな銀河があります。「あすか」はこれらの銀河についても、初めて波長の短いX線での撮像観測を行いました。

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