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中質量ブラックホールの発見

前記のように、私たちの銀河系内のX線連星の観測により、太陽の10倍程度の質量の「恒星質量ブラックホール」が存在することがわかってきました。いっぽう、多くの銀河の中心には、太陽の数百万倍以上の質量をもつ「巨大ブラックホール」が存在することが知られています。では、両者の中間の質量をもったブラックホールは存在するのでしょうか。

太陽の数十倍以上の質量のブラックホールは、星の進化ではできないとされており、実際、私たちの銀河系内にはひとつも見つかっていません。けれども「あすか」の観測よって、別の銀河には太陽の30倍から100倍、そしてときには1000倍もの質量をもつブラックホールが存在することがわかってきたのです。

このようなブラックホール---恒星質量ブラックホールと巨大ブラックホールの中間の質量を持つので「中質量ブラックホール」とよぶことにします---が存在するということは「ブラックホールは成長する」ことを示しており、巨大ブラックホールの種といえるでしょう。実際、観測の進歩に呼応するように、恒星質量ブラックホールから中質量ブラックホールが作られ、巨大ブラックホールへ進化する(大きくなっていく)という理論的シナリオも描かれはじめています。「あすか」に端を発する中質量ブラックホールの研究は、観測・理論の区別なく多くの研究者によって注目され、単に新しいX線天体の発見にとどまらず天体物理学に対して大きな意味をもっているのです。

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