2001年3月、約8年間の軌道寿命を全うして、「あすか」は衛星軌道から外れ地球大気圏で燃えつきました。「あすか」はそれまでの衛星ではできなかった、X線望遠鏡による高いエネルギーのX線の集光結像、CCDカメラ等による撮像とスペクトル観測を可能にしました。その成果はこの冊子にまとめられているとように、あらゆる階層の天体に及び、詳しいスペクトルがわかることで、X線天体の物理に鋭く迫ることができました。中でも鉄をはじめとする輝線のスペクトル情報はこれまでの観測にくらべ、質的なジャンプを世界のX線天文学にもたらしました。今では、「あすか」の成果を含まない1993年以前の教科書はもはや役に立たないと言っても過言ではありません。「あすか」に遅れること6年半に打ち上げられた米国のチャンドラ衛星、欧州のニュートン衛星の新たな成果の多くも、実に「あすか」の観測成果の延長線上にあることに驚かされます。
日本のX線天文学者は「てんま」衛星以来、一貫してスペクトル観測で物理を解明するというX線天文学の流れを作って成功を収めてきました。私たちは今、「あすか」より一桁高いエネルギー分解能の検出器を衛星に搭載して、輝線のもたらす豊富な情報を極めようと準備を進めています。残念ながら2000年に打上げたAstro-E衛星はロケットの事故で失われ、チャンドラ衛星、ニュートン衛星と一斉スタートとは行きませんでしたが、日本のX線天文グループが一丸となって目指す2005年のAstro-E2衛星打上げにより、「あすか」と同様、世界のX線天文学を新たな展開に導くことができるものと確信しています。
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